CIDフォントについて 98.12

CIDフォントを入れたほうがいいかどうかの問い合わせが多数ありました。
たしかに今までフォントを大量に購入しているDTP業界関係者は、また新たにコストが大幅に掛かると懸念していると思います。事実、発表・発売されてから思うように浸透していないのは、コストやRIPの問題が大きいからです。

新規購入の場合、OCFフォントと金額は変わりませんが、バージョンアップの場合、アドビ/モリサワの場合1書体3,150円×書体数分×プリンターやMacの台数分となり、小さなデザイン事務所でも数十万円、出力センタークラスですと数百万円の出費が予想されます。

また、フォントのバージョンアップだけで済まない場合が多く、RIPのバージョンアップや、ダウンロード用ハードディスクの増設など、付帯費用もかなり掛かると思われます。

では、なんでCIDフォントに移行する必要があるか、またどんなメリットがあるかということになりますが、大まかに下記のようになります。

  • 処理の高速化
  • データのスリム化
  • フォントの多機能対応
処理の高速化……CID対応のPSプリンターを使って出力するとOCFフォントより2倍近く高速化されます。ページ物メインの仕事をしている会社には大きなメリットといえます。

これにはいくつかの条件があります。まず、プリンターのRIPのポストスクリプトバージョン2015以上がCID対応です。2014以前のプリンター(アドビ純正のRIPを搭載していれば)は印刷はできますが、スピードはかえって遅くなります。エミュレーションするためです。従って、使用しているプリンターがCID対応機種じゃない場合、メリットがありません。

データのスリム化……前項の処理の高速化に貢献するため、データの管理をスリム化してあります。また、テクニカルサポートのHFS+の項と関係しますが、Macのハードディスクにインストールした場合でもフォントデータの容量が小さくなっています。

OCFですと明朝体1フォントあたりシステムフォルダに約70個ものファイルがインストールされていましたが、アウトラインの部分は1個のファイルにまとめられました。これはすべての方にメリットがあります。

フォントの多機能対応……1. CID対応のアプリケーション(Illustrator5.5J以降)を使用した場合、旧字体と新自体の切替が一発でできます。今までイラストレーターで作字していた人に嬉しい機能です。

2. フォント自体にツメ情報を埋め込んでいるので、ツメうちができます。Illustrator 5.5J以降はOCFフォントでもモリサワ書体に限ってツメができますが、これはフォントがツメ情報を持っているのではなく、プラグインでツメの設定ファイルを提供しているためです。もし今後すべてCIDフォントを使うことになれば、このプラグインの文字詰めファイルは必要なくなります。

なお、互換性で問題が出ているというのは、フォントの構造をCIDに変更したからではなく、この機会に乗じて(株)モリサワがフォントの字形や位置情報をついでに直したからです。特にOCFフォントを使った縦組みのデータで、ツメが変わるなどがその例です。

CIDフォント対応のバージョンは以下のとおりです。

ATM(AdobeTypeManager)3.9J 以降
PostScript2015 以降
OKIのプリンターMicroline803PS2V 以降
EPSONのプリンターLP8200PS2, LP9200PS2 以降

結論として、出力センターや印刷会社では、お客様の移行状況を見ているところが多く、また制作側も出力センターや印刷会社の対応を見ているというにらめっこ状態になっています。従って手間とお金の掛かることは後回しの状態です。

アドビ社の方針では今後OCFフォントは発売停止するらしく、必然的にCIDフォントへ移行せざるを得ないでしょう。CIDの方が良いことにはかわりありませんので、これからフォントを買う方は間違いなくCIDを選んだ方が良いと思います。

また、既に多数の書体を持っている事務所の方は、予算計上ができるなら早めに移行したほうがいいでしょう。いずれはCIDフォント一色になります。現在がPowerMac一色であるように。68kマックを使っているDTP関連会社はもうそんなに無いはずです。DTP関連アプリケーションがバージョンアップしてPowerMac専用になりつつありますので。

ここでメーカーより対処のアナウンスがない問題点を1つ上げます。すずきこうぼうで使用しているモノクロPSプリンターはOKI Microline803PS2+Fというプリンターです。このプリンターはDTP業界標準とも言える機種で、現在でも多くの会社で使っていると言われています。

RIPバージョン2014なのでCIDフォント対応ではありませんが、CIDフォントを使用する事はできます。後からダウンロードしたフォントに関してはCIDにバージョンアップできますが、プリンターのROMに最初から搭載されている5書体は新たに買えっていうことでしょうか。

プリンター本体の価格にこの5書体を使用する金額も含まれていますので、バージョンアップで対応するべき事です。しかし、メーカーの対応は冷たいものでした。(株)沖データ、(株)モリサワから詳しいコメントは頂けませんでしたが、どうも大元のアドビ社がライセンス問題で許可しないらしいです。

メーカー間の問題がユーザーに影響することはコンピューター業界でよくある話ですが、早急になんとかしてほしいものです。


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